転んだ

大田市場からの退勤途中、乗ろうと思ったバスにタッチの差で乗りそびれ、次のバス停で追いつこうと走り出した瞬間、足がもつれて派手に転倒した。

 

左手に握っていたiphoneはガラスが粉々になり、中のパーツがむき出しになった。右手は手のひらを思いっきりレンガ舗装の歩道に擦り付けて、大きな擦過傷を作ってしまった。

 

痛くて涙が出そうになったし、真夏の真昼に、誰もいない大田市場で一人こけるシチュエーションが悲しすぎて泣きそうになった。のだけれど、泣いても誰も反応しないのだと思った途端に、涙が引っ込んだ。

 

誰かに甘えたくて僕は泣こうとした。けれど、その誰かなんて存在しないので、僕は泣くことをやめた。そう理解したとき、これを引き受けてあと50年生きるの、しんどいな・・・と思ってしまった。