練習ノート

簡潔で、読んでいて気持ちのよい文章が書けるよう、練習しています

メイヤーレモン

朝、出勤してLINEを開けると、野菜の注文が入っていた。今日中の納品希望と書いてあるけど、もう配送トラックは出発してしまった。

結局、自分で調達して、自分で運ぶことにした。社用車(中古の三段変速自転車)に乗って、築地場外に行く。場外は遅い時間(と言っても、まだ朝の10時だ)まで開いているので、レモンを19個と、食用菊と、小菊を買う。レモン19個なんて変な買い方をするのは業者しかいないので、店の人はしれっと値引きをしてくれる。買う側は「助かりました」と言いながらレモンを頼み、売る側は「10円引いとくね」と応える。朝から、いいリズムで買い物ができた。

荷物を背負って自転車に乗る。工事中の環状二号から虎ノ門方面へ。虎ノ門ヒルズの足元で再開発を待つ雑居ビルには、こぎれいなカフェがいくつも出店していた。アメリカ大使館の横を通り過ぎてホテルオークラの裏を抜け、六本木一丁目に。丹波谷坂という鬼のような急坂を自転車で突っ切って、六本木交差点を左折して西麻布へ。野菜や果物を抱えて六本木を走るとき、街の景色の一部になったような、ちょっと誇らしい気持ちになる一方で、この仕事を積み重ねた先にいったい何があるのかと、不安な気持ちにもなる。

お店で商品を取り出すと、それ、頼んでいたものと違うよと指摘される。慌ててLINEを見返すと、小菊なんてどこにも書いていなかった。