夏の夜・実家

実家は川筋の斜面に建っていて、川筋側の窓は視界を遮るものが何もない。夏の夜でも窓を開ければ風がよく抜けて、エアコンをつけることはほとんどない。

家族は僕を残して全員就寝し、僕はひとり、窓のそばでパソコンを叩いている。窓の外では虫の鳴き声がして、カーテンは風でぼんやり揺れている。風と共に、うっすらと夏の草いきれが運ばれてくる。

僕はこれが好きで、だからこの町が好きだったのだ。